パーパスやバリューズは策定することも重要ですが、その実現のためには社員一人ひとりがパーパスの意味を考え、実践することが大事です。パーパス・バリューズを策定する『未来をつくる合言葉策定プロジェクト』の過程では、これから実際に行動に移す社員を代表してリーダークラスの社員18名が、できあがったパーパスを元に「持つべき共通の価値観」や「行動指針」であるバリューズについて議論し、言語化していきました。
経営統合から約4か月後、各部門のさまざまなバックグランドを持つ社員が参加したワークショップを通して何を感じたのか──。初めてパーパスを見た印象から、参加を通じて得た気づきまで、3人のワークショップ参加社員が語り合いました。
KDDI事業統括本部 CRM第1本部 CS広域3部 運用ユニット
中里 美和 ユニット長
2008年、アルティウスリンク(旧KDDIエボルバ)中途入社。主に官公庁・通信・金融・サービス・マスコミ等、さまざまな業種のコールセンター・メールセンター・事務センター・企業受付等のマネージャーとしてセンター運営に加え、新規立ち上げなどを経験。16年に子供を出産し育児休業を取得、17年に復職後、ユニット長(旧グループリーダー)へ任用、19年にKDDI事業本部へ異動、現在に至る。
海外事業統括本部 海外事業本部 海外事業部
坂東 辰也
2005年、アルティウスリンク(旧りらいあコミュニケーションズ、旧もしもしホットライン)新卒入社。主に大手金融機関、衛星放送事業者、家電メーカーなどのオペレーションに従事した後、21年にGC本部戦略企画部に配属され、本部運営業務と国内営業を担当。2022年6月に海外事業統括本部に異動、現在に至る。
デジタルCX統括本部 DX戦略本部 DX推進部 DX推進ユニット
川村 友星
2016年、アルティウスリンク(旧りらいあコミュニケーションズ)新卒入社。主に大手金融機関のオペレーション、新規/既存営業に従事。2022年に現部署に異動、現在に至る。
※所属・役職は2024年3月インタビュー時点となります
私は海外事業部という部署で、アルティウスリンクにある海外グループ会社の経営支援や、国内と海外それぞれの担当者への営業支援に関する仕事をしております。
私は通信業界のお客様センターの運用をサポートする部署のユニット長をしております。主な業務は、その部署のある東京センターと札幌センターの運営管理や統括業務です。
私はDX推進部に所属しています。DX推進部は、お客様への電話対応業務を行う「コンタクトセンター」のDX化(デジタルトランスフォーメーション=ITによる業務の効率化)を目標に、チャットボットや有人チャットなど電話以外の方法で、センターや営業の社員と共に営業活動をする部署で働いています。
ワークショップメンバーに選ばれたときは、どのように感じましたか。
まだパーパスの詳細が明らかでない状況でしたので、「ワークショップでいったいどんなことをするんだろう」というのが率直な印象でした。
私も最初は「何をやるワークショップなんだろう」と思いました。経営統合したばかりだったので「あらたに理念を作るんだ、すごく難しそうだな」という印象がありました。
私も最初はお二人と似た印象で、策定プロジェクトの存在自体は認識していたのですが、既にある程度できあがりつつある段階において、今から参加する私たちにはどういう役割があるのかという疑問がありました。実際に参加してみると、この新しいパーパスを社内に浸透していくためには、まず自分たちが理解し、伝道役となって広めていかなければいけないんだろうなと、その重大な責任に気づいたときに、自分に何ができるのかということが頭をよぎりました。
冒頭で皆さんにパーパスが共有されました。初めてパーパスを見たときの印象を教えてください。
忖度なしに第一印象で「すごくいいな」と思いました。「もっとつよく」と「うつくしく」という部分は、今後私たちが当たり前にやっていかなければいけないことだと思うなかで、最後に「おもしろく」という言葉が入ることで、パーパスの持つ色合いが違ったように感じました。「真面目なだけじゃ駄目なんだぞ」、「仕事って楽しんでいいんだ」というような、どこか許された感が出ていて、良い言葉だなと思いました。
最初は「すべてひらがななんだ」と思いました。そしてすぐに「うつくしく」という言葉に注目しました。「つよく」や「おもしろく」という言葉はほかの会社でも企業理念に取り入れられている言葉だと思いますが、「うつくしく」という言葉はほかではあまり見たことがなく、独自性がある言葉だなと感じました。あとは「もっと」という言葉が、体育会系っぽいなという印象でした(笑)。
私は正直少し長いなと思いました(笑)。ただ、とてもシンプルな言葉なので働く社員はもちろん、子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで幅広い世代の人たちにとってもわかりやすく、いろいろな想像が膨らみやすい言葉だなと感じました。
最初の一節である「そのつながりを」という言葉がありますが、それぞれ皆さんの立ち場でどんな「つながり」を思い浮かべましたか。
私たちの仕事はお客様があっての仕事ですので、まずはそのお客様と私たちアルティウスリンクとの「つながり」という理解もありますが、ちょうど私たちの会社が統合したばかりというタイミングでもありましたので、旧KDDIエボルバ(以下、エボルバ)と旧りらいあコミュニケーションズ(以下、りらいあ)のつながりも想起しました。ほかには当社の全国にある事業所、札幌から沖縄、そして国内から海外まで、さまざまな離れた部門同士のつながりを指していると感じました。
そのほかにもDXを推進する部署や営業部署、オペレーターとスーパーバイザーとの関係など、関係部署間の横のつながりから縦のつながりまで、さらに人だけでなくシステム連携もすべてつながりだという話も出ていましたね。
統合前の両社とも約30年ほどの歴史があるなかで、アルティウスリンクとしてもこれから創業何十周年を目指すという、過去から未来までつながっているという考え方もあるのかな、という意見もありました。
ほかにもいろんな意見が挙がっていましたが、「そのつながりを」という言葉の最初に「その」という部分があることで、みんないろんな思いを張り巡らせることができることから、この「その」もすごく重要なワードなんだな、ということをあらためて感じました。
ワークショップ②では、このパーパスから想起する人はどんな人か、人物像について議論となりましたが、どんな人物が出てきたのか教えてください。
私はもうパッと見てすぐに大谷翔平さんを想起しました。ちょうどグローブを寄付していることがニュースになった時期で、人と野球、人と人のつながりも大事にしていて、毎年進化しているし、スポーツマンシップの美しさもあって、ユーモアもおもしろさもある…ってもう完璧ですよね(笑)。ほかにも坂本龍馬などみんなそれぞれ偉人の名前を挙げていました。
私たちのグループでは、誰か具体的な個人ではなく、人間味をちゃんと持った人が熱く仕事をしているイメージだよね、という意見が挙がっていました。
私たちのグループも著名人の名前は出てこなかったのですが、話のなかである役員の名前を挙げている方がいました。その方は、「“仕事はワクワクしなくちゃダメなんだ”ということをおっしゃる方で、それが僕の力になってるんです」ということをすごく熱く語っていて。それを聞いているときに、そんな役員の方が策定委員会メンバーのひとりとしてこのパーパスをつくったのかなと思うと、妙に腹落ちした感がありました。
SPECIAL|特集
2024/04/24
「未来を築くパーパス ~策定のプロセスとリーダーたちの想い」策定プロジェクト公開編
パーパスを体現する人のイメージとして、複数の写真のなかから一枚を選ぶワークショップがありました。みなさんどのような人物の写真を選んだのでしょうか。
私たちのグループは「肩車をしているお父さんと子どもの写真」を選びました。二人とも笑顔であることに加えて、二人とも同じ方向に目線が向いているところが良いと思いました。また、この写真を撮ってる人のことまで想像すると、同じ場所にお母さんもいるという解釈もできました。この写真のフレームから見えないところも含めていろいろなつながりが見えることから、この「お父さんと子どもの写真」がパーパスの世界観と合っているよね、という流れで選びました。
私たちのグループも同じく「お父さんと子どもの写真」でした。ほかの候補として、「スーツでジャンプしている勢いのある人」の候補もありましたが、「仕事感がですぎている人物はこのパーパスにはそぐわないのでは」という意見が出て、最終的に「お父さんと子どもの写真」を選びました。
この写真選定のときにグループで話していたのですが、30年後、自分と子どもが2人ともアルティウスリンクで働いていると想像すると、とても素敵ですよね。子どもに自分と同じ会社に入ってほしいと思えるってとても素敵な会社だと思いますし、「30年後、本当にそういうことが実現できるようにしていきたいね」と、みんなで会話していました。
とても素敵なストーリーですね。川村さんのグループはほかの写真を選んだようですが。
はい、私のグループは「新しいものをつくる」、「成し遂げたい世界のようなものがある人」、というイメージがその前段階の議論としてありまして、それを「もっと」実現しそうな人と考えると、「熱いサラリーマン」という人物像に落ち着きました。
ただそれだけだと「つながり」という表現ができてないという話になり、仕事中は熱い人だけど、休日はいいお父さんだったら最高だよね、という話から、「お父さんと子どもの写真」と合わせて2枚の選択です。どちらかに絞ろうと議論しましたが、「お父さんと子どもの写真」だけではやはり「もっと」感が十分に出ていないと感じましたので、悩んだ末の2枚です。
2枚で発表した結果、ファシリテーターに「1枚にしてください」と言われていましたね(笑)。
はい、だったら「仕事中の写真」にします!となりました(笑)。
次のワークショップでは、その写真の人がパーパスを実現するためにどんな行動をとるだろうという議論を行いました。グループ内でどんな意見が出ましたか。
私たちのグループは全体的に熱い人を選んだグループでしたので、「やり切る、やり遂げる」ということや、「みんなでやる、みんなでやり遂げる」、そして「この人は裏表なく誰にでもこの熱さで行動する」という意見が挙がっていました。
私たちのグループでは、このパーパスを実現する人は「周囲を幸せにする人じゃないか」という意見が出ていました。自分の成果だけではなく、周りをまず幸せにすることを考えられる人です。特に「周りとの和を大切にできる人じゃないか」という話をしていました。
私たちのグループでは、選んだ写真の人物がおおらかで包容力のあるお父さんというイメージもあって、何でも相談に乗ってくれて、相談しているときもこちらの背景を含めて話をよく聞いてくれそうな人だなという意見が出ていました。相手を尊重し、自分のことをよく見てくれる人のイメージです。そこからイメージを膨らませ、「きっとこの人が出張に行った時のお土産はすごくセンスが良く、みんなが喜びそうなものだろうね」という会話までした記憶があります(笑)。
いいですね。その後、特に重要だと思う行動を3つに絞り、人物像をつくりあげていきました。どんな意見が挙がっていたでしょうか。
いろいろな意見が出ましたが、まず一番大事にしたかったポイントが「人と人とのつながりを大事する」でした。「つながり」というワードがあることからも、絶対にこれは外せません。あとは「称賛する」という意見も出ましたが、称賛って誰かに伝えないと意味がないので、称賛だけではなく「称賛を伝える」という行動にしました。
あとは喜びを分かち合うという観点から、「分かち合うには責任を人に押し付けないというのが前提にあるよね」という話になり、「責任を押し付けず、成果は喜びも含めて分かち合う」の3つが重要項目としてまとまりました。
私はほかのグループと同じところが多く、ひとつが「笑顔」、もうひとつが「人と人とのつながりを大事にする」、最後のひとつは、「大きな目標を持って、その目標を指し示してみんなで進む」という3つです。
私たちのグループでも、やはり「笑顔でいましょう」ということと、「挑戦が讃えられる会社である」ということ、そして「相手を尊重する」という3つを重要項目として選びました。それぞれを選んだ理由は、まず「笑顔でいる」というのは心も体も健康でいるということが前提だということで、2つめの「挑戦が讃えられる」に関しては、会社が前進するためにはイノベーションを生み出す必要があり、そのためには成功や失敗に関わらず、チャレンジしたことが報われる風土が必要であると考えています。
そして3つめの「相手を尊重する」ですが、どれだけテクノロジーが進化しようと、それを動かすのは私たち人間であり、そんな私たちが多様な価値観を否定せずに、お互いを尊重しあうことで、共に新たな価値を創り出せるのではないかと考えています。
各グループから出た重要項目に対し、皆さん一人ひとりが一番共感できるものに青いシールを貼っていきましたが、その投票結果を見て感じたことを教えてください。
投票が集まった意見を見ると、みんな似ているというか、どのグループも違うところがなく、みんな向いている方向性は同じだということをあらためて認識しました。
それを普段自分ができているかというと、できていないことのほうが多いのですが、「つながる」や「尊重する」というのは実行するにはパワーも使いますし、また普段から意識していないといけないことなので、まずは「笑顔で」や「チャレンジ」など、できるところからひとつずつ心がけていこうと思いました。
投票結果で票の集まった項目を見たときには、旧エボルバの行動規範であった「KDDIフィロソフィ」に近いものが出てきたな、という印象を持ちました。ずっと旧エボルバでもフィロソフィを浸透させようという活動がありましたが、「常に笑顔で前向きに」や、「喜びを分かち合う」など、フィロソフィに近い意見が各グループからも出ていたので、みんなの心に浸透していたんだな、とあらためて思いました。
私も同じく、みなさんから挙がってきた項目が、旧りらいあの「誠実に 笑顔で チャレンジ精神を持って プロフェッショナルとして」という4つの行動基準と似ているという印象を持ちました。ほかのグループメンバーに聞いても同じ印象を持った人が多く、やはり両社とも大切にしていることは同じなんだと感じました。
逆に議論のなかで「ここが違う」という声はありましたでしょうか?
それがあまりなくて、グループ内で聞いても、「それは違うんじゃない」とか「それは新しいね」という意見はなく、圧倒的に「そうだよね」という意見のほうが多かったので、今回のワークショップでもみんな前から同じ会社だったという感覚で話が進められました。
中里さんがおっしゃるように、旧りらいあ、旧エボルバ問わず、またいろんな役職の方が集まったなかで、「相手を尊重する」という行動にこれだけみんなの共感が集まったというのは、やっぱり私たちは人と人をつなぐビジネスを生業にしている会社で働いていて、みんな自分本位じゃなく、相手あってのお仕事という意識を持っているんだということを実感いたしました。
今回のワークショップを通して、私たちの仕事の社会的意義みたいなところも含めて、根っこのベースになる考え方を改めてみんなで共感できたのではないかと思います。
これからパーパスや、皆さんが原型をつくった行動指針がどのような存在になれば良いと考えていますでしょうか。
このパーパスや行動指針に沿った行動は、どの会社だろうと、どの仕事だろうと、必要な行動だと思っていますので、5年後も10年後もみんなの共通言語として「つながりを強くできているか、うつくしくできているか」と照らし合わせながら、何十年経っても間違わないように、立ち返ることができる拠り所のような存在であってほしいと思います。
旧両社でそれぞれ浸透していた行動指針のように、気付いたらそこにあるような存在になってほしいと思います。そして気がつけば自分の好きな行動指針がそこにあって、ちょっと近い未来には、このパーパスや行動指針を見て、「この会社いいな」と思ってくれる人が増えてくれば素敵だと思いました。今後自分が体現するというのはもちろんですが、それを体現してもらいやすい環境もしっかりとつくっていきたいと思います。
私もこの言葉が私たちの行動や判断に迷う時の指針になってほしいと思います。そしてこの「つよく、うつくしく、おもしろく」は私たちアルティウスリンクの社員として絶対に失ってはいけない3本柱だと思いますので、毎日このパーパスを意識しながら、人と人とのコミュニケーションをつくる会社として企業成長していくために、後から入ってくる世代に対しても私たちがまず行動し、示していきたいと思います。
SPECIAL|特集
2024/04/24
「未来を築くパーパス ~策定のプロセスとリーダーたちの想い」策定プロジェクト公開編