生成AIの急速な進化を背景に、企業におけるAI活用は新たなフェーズを迎えています。業務にAIを導入する企業が増える一方で、一部の社員しか使っていなかったり、会議の議事録作成など限られた用途にとどまっていたりと、具体的な業務改善につながっていないことに課題を感じている企業も少なくありません。
いま問われているのは、AIの導入そのものではなく、現場で活用・定着させ、業務課題を解決し成果につなげることです。
こうした課題に対し、アルティウスリンクは「Total CX² Design Company」というビジョンのもと、AIを活用した業務変革や企業活動の最適化を支援しています。その具体的なソリューションの一つが、Microsoft Copilot(以下、Copilot)をはじめ、AIエージェントやPower Platformなどを活用した「Microsoft 365 Copilotトータルサービス」です。
そこではどんな支援が行われ、AIをどう実務に組み込んでいるのか。Microsoft 365 Copilotトータルサービスの企画・運用に携わる廣瀬と、現場で研修や活用支援を担う比嘉に、AI活用市場の変化や企業が直面する課題、現場起点だからこそ提供できる支援の価値について話を聞きました。
- AI活用は「導入」から、業務にどう組み込むかを考えるフェーズへ
- AI活用を知り、広げ、深める。企業のフェーズに合わせた3つのアプローチ
- 社内での実践から生まれた、現場起点のAI活用支援
- AI活用のゴールは、業務課題を「解決しきる」こと

CX²-IT事業統括本部IT第3本部サービス1部3ユニット ユニット長代理
廣瀬 晃平
コンタクトセンターやITサポート領域でのマネジメント経験をもとに、現場課題の抽出とDX推進に従事。現場での実践を起点に「Microsoft 365 Copilotトータルサービス」の立ち上げを主導し、現在はAIを活用しながら企業の業務変革を支援している。

CX²-IT事業統括本部IT第3本部サービス1部3ユニット
比嘉 辰徳
コンタクトセンターの運営や業務改善の経験を活かし、Copilotの検証や企業向け研修、活用支援の業務に従事。現場での実践を起点に、AIの定着支援から業務課題の解決まで幅広く支援している。現在はAIエージェントの活用も含め、企業の生産性向上とDX推進を担う。
AI活用は「導入」から、業務にどう組み込むかを考えるフェーズへ
生成AIを取り巻く状況は、ここ数年で変化しています。特にAI活用が進んでいる企業では、「まず使ってみる」という段階から、「組織の業務にどう組み込んでいくか」というフェーズに移りつつあります。例えば、文章の作成や会議の要約といった個人単位の活用だけでなく、特定の業務フローにAIを組み込むことで自動化したり、AIエージェントに一部の業務を任せたりと、より具体的な業務への活用が進んでいます。
もちろん、すべての企業がそこまで進んでいるわけではありません。ただ、先行している企業がそうした段階へ進む中で、これから多くの企業も「まず使ってみる」ことの先にある、「業務への組み込み」を考えるフェーズへ移っていくのではないかと考えています。


私は主に企業向けのAI研修で講師をしていますが、実際にお客様企業からいただくご相談内容も以前とは変わってきています。生成AIの活用が広がり、基本的な使い方を知る機会が増えてきたことで、研修についても一般的な使い方を学ぶだけでなく、「より具体的な業務課題を解決したい」というニーズが高まってきました。
特に最近では、AIエージェント構築など、より実践的な活用法を学びたいというご相談も増え、企業の関心も「AIの使い方を知る」段階から、「自社の業務でどう活かすか」を考える段階へ移ってきていると感じています。
一方で、AIを導入すること自体が目的になってしまっているケースも少なくありません。実際に定着している企業を見ると、単に使い方を覚えるだけではなく、「自分の仕事のどこで使うのか」「どう活用すれば業務を変えられるのか」というイメージを持ちながら取り組んでいるケースが多く、大切なのは、導入して終わるのではなく、現場で実際に使われ、それが日々の業務に定着していくことだと考えています。
AI活用を知り、広げ、深める。企業のフェーズに合わせた3つのアプローチ
実際にご相談いただくのは、DX推進やDX企画を担う部門の方が多いです。中には、2〜3人ほどの少人数で全社のAI活用推進を担っており、利用促進や定着支援まで手が回らないという企業もあります。一方で、特定の事業部門の担当者から「この業務をAIで改善したい」と、具体的な課題についてご相談いただくケースもあります。
こうした企業ごとの課題や現在地に合わせて、私たちは大きく三つの方向から企業を支援しています。一つ目は、研修や活用事例の共有などを通じてAIを使う人を増やし、AI人材の育成をする「知る」支援。二つ目は、活用事例の配信やAI活用に関する悩み相談をお受けしながら利用を定着させていく「広げる」支援。三つ目は、具体的な業務課題に踏み込み、AIエージェントの構築や自動化などにつなげる「深める」支援です。

ただ、すべての企業が最初から「この業務をこう変えたい」という課題が明確になっているわけではありません。「Copilotを導入したけれど、思うように活用が進んでいない」という企業には、まず何を実現したいのか、どの業務から取り組むのかを整理するところから支援します。
一方、解決したい業務課題が明確な企業には、アセスメントを省き、具体的な改善やAIエージェントの構築、自動化に向けた支援から始めます。決まった支援内容を一律に提供するのではなく、お客様企業の現在地に合わせて進め方を組み立て、必要なところから伴走していくのが、私たちの基本的な考え方です。
社内での実践から生まれた、現場起点のAI活用支援
実は、現在ご提供している研修は、最初から社外向けのサービスとして企画したものではありません。私たちはもともとMicrosoft関連の業務に携わる中で、AIによって業務のあり方そのものが変わっていく様子を、早い段階から目の当たりにしていました。
こうした変化に対応するためには、まず自分たち自身がAIを使いこなし、業務変革を実践する必要があると考えました。そのため、まずは自社の業務でCopilotを活用し、そこで得たノウハウや活用事例を社内へ共有する取り組みからスタートしました。当初は、実際の画面や活用例を紹介する情報共有の場でしたが、「もっとしっかり教えてほしい」という声が上がるようになりました。そこで、少人数で実際に操作しながら学ぶ研修へ発展させたところ、社内で好評を得ることができました。その手ごたえから「こうした支援はお客様企業にも役立つのではないか」と考え、現在のサービスが生まれました。

私自身も、そうした社内研修を受けた一人です。研修をきっかけに自分でもAIを学び始め、その後、社内公募に手を挙げて現在のチームに加わりました。そうした経験もあるからこそ、私たちの「知る」支援では、単にAIの機能や使い方を説明するだけではなく、実際に手を動かしてもらう「ハンズオン研修」を取り入れています。「自分にもできる」「こういう使い方ができるんだ」と体感していただくことで、職場に戻った後の実践につなげることが狙いです。
その研修カリキュラムも、決まった内容を一律に提供するのではなく、お客様企業の課題や業務に合わせて内容を組み立てています。私自身、これまでさまざまな現場でBPOやバックオフィス業務を経験してきたので、お客様企業の業務内容を伺いながら、「この業務ならAIをこう活用できそうだ」と、実際の業務を想定し、研修内容に落とし込めるところも、私たちの強みの一つだと思っています。

「深める」支援では、特定の業務課題に踏み込み、Copilotだけでなく、Copilot StudioによるAIエージェントの構築やPower Platformを使った自動化なども組み合わせながら、具体的な業務改善を進めています。
例えば、あるお客様企業では、「業界情報の収集から必要な情報の選定・配信までを一人の担当者が担っており、属人化している一連の業務をできるだけAIで自動化したい」という課題がありました。
そこでまず行ったのが、業務を分解し、「どこまでAIに任せ、自動化するか」を整理することです。
情報を収集する工程はAIで自動化できますが、その次の「集めた情報の中から何を選ぶのか」という判断には、担当者が長年培ってきた経験や基準が含まれているため、すぐにAIへ置き換えるのは難しいと判断しました。
最初は情報収集のみを自動化し、選定は引き続き担当者が実施。その中で「どの情報を選んだのか」という担当者の判断パターンを蓄積し、現在は、その基準をAIエージェントへ反映して選定の自動化を目指すフェーズへと進んでいます。まず自動化できるところから着手し、その次に人が担っている判断も徐々に仕組み化していくという進め方です。

このケースのように、AI活用をご相談いただく中では、「できるだけすべてをAIで自動化したい」というご要望をいただくこともありますが、実際の業務を見ると、すべてをAIだけで完結させるのが最適ではなく、人の判断や確認を残したほうがいいケースもあります。先ほどの事例でも、AIが取得したURLや情報が本当に正しいかを確認するなど、品質を担保するために、人の目を入れる工程を残しました。
重要なのは、AIの導入自体を目的にするのではなく、業務全体を見ながら「どこをAIに任せ、どこに人を残すのか」を見極めることです。

私たちはBPOを通じて、さまざまな企業の業務に携わってきました。そうした現場で培った知見があるからこそ、どの部分をAIに任せ、人の判断を残したほうがいいのかという「勘どころ」を持ってご支援できると考えています。AIや自動化に任せられるところは効率化し、人が担ったほうがいい業務にはBPOを組み合わせる。AIだけではなく業務全体を見ながら、最適な形を一緒につくっていけることが、私たちのご支援の強みです。
また、こうした業務起点の支援を、技術面から裏付けているのがMicrosoftとのパートナー連携です。Microsoftの認定パートナーとして専門性を備えているほか、Microsoftとの連携を通じて新しい情報や機能をいち早く検証し、その知見を研修やご提案に活かしています。業務と技術、両方の視点を持ちながら、お客様企業に合ったAI活用をご提案できることも、私たちが支援する価値のひとつだと考えています。
AI活用のゴールは、業務課題を「解決しきる」こと

こうしたご支援を通じて私たちが目指しているのは、AIを導入したり、仕組みをつくったりすること自体ではありません。実際の業務の中で使われ続け、業務改善や生産性向上につながって初めて、AIを活用する意味があると考えています。
私たちとしても、支援をCopilotだけにとどめるつもりはありません。お客様企業が利用しているプラットフォームに合った提案を行い、Copilotだけでは解決できない課題があれば、AIエージェントを構築したり、Power Platformで業務を自動化したりと、さらにその先にまで踏み込んでいきたいと思っています。
目指しているのは、特定のツールを使っていただくことではなく、お客様企業が抱えている業務課題を「解決しきる」ことです。そのために必要であれば、さまざまな手段を組み合わせながら支援していきたいと考えています。
そのためにも、私たちは、時間をかけて大きな仕組みをつくることが必ずしも最善だとは考えていません。AIの進化は非常に速く、完成するころにはもっと簡単な方法で実現できる可能性があります。まずは小さく始めて早く成果を出し、その積み重ねでAIの活用範囲を広げていくことを大切にしています。
私たちが最終的に目指しているのは、お客様企業の生産性向上だけではありません。その先で、お客様企業が自らAIを活用しながら業務を変革し、継続的に価値を生み出せる状態をつくることです。コンタクトセンターやバックオフィス、IT支援で培った知見とAIを掛け合わせ、企業活動全体の最適化を支援する。それが私たちの目指す「Total CX² Design Company」の姿であり、Microsoft 365 Copilotトータルサービスを通じて実現していきたい価値だと考えています。
