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CX²-CO|組織・コーポレート基盤の再設計

人事担当者の4割が「属人化」を課題視――属人化は本当に悪なのか?人事業務改善の第一歩を考える

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採用や育成、人材活用など、人事部門に求められる役割が広がる一方、日々の定例業務に追われ、業務改善や人事戦略に十分な時間を割けない企業も少なくありません。

アルティウスリンクが実施した調査※では、人事担当者が感じる課題として「業務の属人化」が43.8%で最多、次いで「人材不足」が34.9%となりました。また、経営からは「コスト最適化・効率化」が最も求められており、人事部門は限られたリソースの中で効率化と高度化の両立を迫られています。

限られた人員で業務を確実に進めながら、人事部門としてより注力すべき業務に取り組むには、何から見直せばよいのでしょうか。調査で最も多くの人事担当者が課題として挙げた「業務の属人化」。しかし、属人化を解消することが本当に人事業務の改善につながるのでしょうか。

今回は、実際に企業の人事業務におけるBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を通じて多くの現場改善に携わってきた、アルティウスリンクの大谷と伊瀬に、現場で見えている課題とその背景、人事業務を改善するための視点を聞きました。

インタビュイー紹介

大谷 隆之のプロフィール写真

コーポレートバックオフィス本部 本部長

大谷 隆之

人事・総務・経理などコーポレート領域における業務改革支援を担当。人事・給与業務を中心に、企業のコーポレート部門の業務標準化、BPR(業務改革)、運用改善、アウトソーシング活用支援に従事。通信、金融、不動産業界をはじめとする大手企業の人事・バックオフィス改革プロジェクトを多数手掛け、業務設計から運用定着まで一貫して支援している。

伊瀬 実生のプロフィール写真

コーポレートバックオフィス本部 CBO開発部企画ユニット

伊瀬 実生

2017年に入社後、民間企業向けBPO業務に従事。その後、自治体営業を経験し、コーポレート部門におけるバックオフィス業務の営業支援および業務構築支援を担当。業務設計や運営体制構築の知見を活かし、業務効率化やDX推進を通じたバックオフィス改革に取り組んでいる。

属人化をなくすのではなく、業務継続リスクをなくす

大谷 隆之
大谷

私たちが人事領域のご相談を受ける中で感じているのは、人事部門に求められる役割そのものが非常に広がっているということです。

その背景には、就労人口が減少する中で、人材の価値が相対的に高まっている現状があります。限られた人材をどう採用し、定着につなげ、長く働き続けてもらうのか。働き方についても、テレワークや短時間勤務といった柔軟な働き方にどう対応していくのか。人事部門が考えるべきテーマは、以前よりも多様化していると感じています。

その一方で、人事には毎月、毎年のサイクルで必ず回さなければならない定常業務が存在します。入社した方を受け入れ、勤怠を管理し、給与を支払い、福利厚生を提供するといった、締め切りの決まっている業務です。人事戦略のようなより高度な領域に注力したいけれど、目の前の業務を回すだけで手一杯になってしまう――私たちにご相談いただく企業には、そのような状況が多く見られます。

大谷隆之がインタビューで話している様子
伊瀬 実生
伊瀬

加えて実務の現場では、担当者の高齢化や後任不足という問題もあります。たとえば給与業務は、給与計算ソフトの使い方だけを知っていてもできる業務ではありません。その会社の規定を理解したうえで、社会保険や税務など、幅広い専門知識も必要です。

こうした知識や経験を持つ人材をすぐに育成することは難しく、限られた人員で業務を確実に回そうとすると、経験や専門知識を持つ担当者に頼らざるを得ない場面も出てきます。その結果として、「その業務を分かるのはその人だけ」という属人化しやすい構造になっています。

つまり属人化は、単に担当者が仕事を抱え込んでいるというだけでなく、人事業務の専門性の高さも、その背景の一つになっているのではないでしょうか。

大谷 隆之
大谷

その観点からも、私は属人化そのものがすべて悪だとは考えていません。問題なのは、その方がいなくなった途端に業務継続に問題が生じてしまうような、経営上のリスクになってしまう状態です。このことからも人事部門の業務を見直す際は、「属人化をなくす」ことを目的にするのではなく、専門性を持つ方が引き続き担うべき業務と、一定のルールやプロセスに落とし込める業務を「切り分けていくこと」が大切だと考えています。

改善の第一歩は「全体像の可視化」 縦割りを越えてフローで捉え直す

伊瀬 実生
伊瀬

具体的に業務を切り分けていくうえで、私たちが重視しているのが、「業務の全体像を把握すること」です。やはり全体が見えなければ、どこに負荷がかかっているのか、どこに担当者独自の判断が入っているのかが見えてきません。

しかし人事の現場では、担当者ごとに仕事が割り振られ、縦割りになっているケースも少なくありません。その構造から、一人ひとりは自分の担当業務を理解していても、それぞれの仕事がどうつながり、入口(採用)から出口(退社)までどのような流れになっているのか、全体を把握することが難しくなっているケースがあります。

伊瀬実生がインタビューで話している様子
伊瀬 実生
伊瀬

実際に私たちが外部から業務委託に入る際も、この全体像の把握が大きな難関になります。担当者によっては意識せず行っていたり、言語化が難しかったりするケースもあるため、状況によっては担当者の隣で業務を確認する「サイド・バイ・サイド」を行い、実際の業務の流れを一つひとつ確認することもあります。

そうやって業務を洗い出し、一つのフローとして可視化してみると、「どういう流れで仕事が進み、どこで個別の対応や判断が必要になるのか」という全体的な構造が見え、その中にある一つひとつの作業についても、必要な作業と不必要な作業を精査することができるようになります。たとえばチェック作業についても、「なぜこの確認が必要なのか」を辿っていくと、「前任者から引き継いだまま何となく続けていた」「実は誰も参照していない」といった作業が浮き彫りになることも珍しくありません。

これは今までの仕事の進め方を否定するのではなく、長年積み重ねられてきた業務を全体として見直すことで、それぞれの作業が持つ本来の目的を再確認していく前向きなプロセスです。

このように全体の流れと、それぞれの作業の目的をセットで確認していくことで、「継続すべきか」「標準化できるか」「専門的な判断を残すべきか」を冷静に判断できるようになります。

属人化の正体は、見えない「判断基準」にある

伊瀬 実生
伊瀬

こうして業務が整理できてくると、次のハードルが見えてきます。それは熟練担当者の 「頭の中にある判断基準」 をいかに言語化し、共有できる判断基準として明確にできるかという点です。この判断ポイントは、最初からすべてマニュアルになっているわけではなく、担当者の長い経験の中で培われ、判断していることが多いため、次はその頭の中の知見をアウトプットすることに着手します。

もちろん、これは担当者から仕事や専門性を取り上げるためではありません。改善の現場では「自分の仕事が無くなってしまうのでは」と不安を感じる方もいらっしゃいますが、その場合には、私たちは「専門性を持った方が、本来その知見を生かすべき仕事により注力できる状態をつくっていくためのプロセスであること」を伝えています。

そうして出てきたものを一つずつ可視化しながら、「この判断は今後も専門性を持つ担当者が行うものなのか」「判断基準を明確にすれば、ほかの人でも対応できるものなのか」を一緒に整理していくことで、最初は専門家に確認しないとわからないとされていた業務でも判断基準が明確になり、他の人でも対応できる範囲が増え、属人化の解消につながっていきます。

業務委託の本当の価値は「業務を透明化」できること

伊瀬 実生
伊瀬

業務内容や判断基準が整理できてくると、さらに「その業務を誰が担うのか」まで考えることができるようになります。社内で分担・シェアする方法もありますし、業務の一部をBPOなどの外部に委託する選択肢もあります。

実際に私たちへご相談いただく場合、その対象になりやすいのは、業務量が一定量あり、毎月継続的に発生する業務です。たとえば、入退社や異動に伴う手続き、勤怠、給与計算、年末調整などが代表例ですが、特に給与計算は手間や負荷が大きい一方で、誤りがあれば社員のモチベーションにも影響し、会社としての信用にも関わることから、自社リソースの負荷軽減を目的に、外部を活用する対象になりやすい業務となっています。

ここで知っておいていただきたいのは、「外部に業務を委ねる過程が、業務を可視化・透明化する機会にもなる」という点です。

私たちが業務を引き受ける際には、ブラックボックスになっている業務を可視化し、判断基準や運用方法を整理していくという手順を踏みます。そうして透明性のある形で運用が整理された状態になれば、将来的にアウトソーシングをやめ、自社でもう一度運用したいと考えた場合でも、その内容をお渡しすることができます。

第三者の目を通して業務が可視化された状態をつくる。――このような活用もBPOにおける一つのメリットです。

大谷隆之と伊瀬実生が対談している様子
大谷 隆之
大谷

もちろん、最初から「何を外部に委託するか」を決めておく必要はありません。初めて外部委託を検討される企業の中には、業務分析も含めて半年ほどかけて慎重に検討されるケースもあります。どの業務を対象にするのか。そしてどのような効果を期待するのか。その方向性を社内で揃えるためには、しっかり時間を使っていただいたほうがよいと思っています。

実際に取り組みがうまく進んでいる企業に共通しているのは、「自社のコーポレート部門をどうしていきたいのか」「その中で人事部門がどうあるべきか」という経営視点とリンクした形で検討が進んでいる点です。目的意識が明確であるため取り組みを継続しやすく、社内の意志統一もスムーズに行われます。

一方で、経営陣の理想と現場の課題感にギャップが存在するケースも少なくありません。だからこそ、経営陣の目指す姿だけではなく、現場は何に困っていて、本当は何を解決し、何に時間を使っていきたいのかという現場の声を丁寧にすくい上げ、両者の着地点を探りながら進め方を検討することも大事だと考えています。

経営と現場の想いを揃え、リソースを人事本来の役割へ

伊瀬 実生
伊瀬

この一連のプロセスにおいて要となるのは、「業務を適切に切り分け、標準化していく知見」です。私たちアルティウスリンクも、たくさんの社員を抱える会社として、日々膨大な数の社員を採用し、人事業務の壁に直面し、自ら業務の切り分けや属人化の解消に取り組んできました。この自分たちが乗り越えてきた知見を活用できることが、私たちのBPO支援の強みだと考えています。

大谷 隆之
大谷

これからの人事部門には、定常業務を確実に回すことだけでなく、人事戦略などより高度な業務に注力することとの両立が求められます。

BPOなどの外部の力を借りるとしても、最終的に大事なのは、「人事部門として何を目指し、そのために既存のやり方のどこを変えるか」という意志を持つことです。その意志に従って、一つひとつの作業や判断基準を言葉にし、専門性を残すべき部分と標準化できる部分を丁寧に見極め、次のステップへ進むための余力をつくっていく。――そうやって少しずつ積み重ねていくことで、人事部門全体の仕事のあり方も変えていけるのではないかと思います。

大谷隆之と伊瀬実生が取材後に並んで座っている様子